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◆STORY
いつまでも眠っていたくなるほどに平和で
個人の茶会では満足できないほどに退屈な、
ありきたりな一日を告げるはずの鐘の音だった。
鐘の音で目を覚ました彼らは、
もう安らかな昼下がりを過ごせないことを知った。
一人の村人が、死んでいた。
ぐちゃぐちゃの、ばらばらになって。
「だれが村人を殺したんだ。」
「この村で命を殺せるのはただひとりだ。」
「犯人は狩人にちがいない。」
「裁け、」
「裁け、」
「平和を壊した罪人を殺せ!」
牢に繋がれた囚人は、
鉄格子の窓から光を浴びた。
今までの人生を、愛しむ様に。
石壁の向こうから降りた死神は、
進んで罪を被った愚者に取引をもちかけた。
今までの人生を、愛しむ様に。
狩人の家に置いて行かれた狼は、
冷めた床に座って待ち続けていた。
今までの人生を、愛しむ様に。
村はずれの小屋に住む赤頭巾は、
友人を救うために暗躍を始めた。
今までの人生を、愛しむ様に。
――罪人、だーれだ。
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